映画の話

映画 覚え書き

浮雲

いまさら、名作中の名作 成瀬の浮雲かよ...といった感じでテンション低めで見始めたものの、完全にヒッピー転落ムービー〜ロンググッドバイや冬の旅〜の系譜としてめちゃくちゃ引き込まれてしまった。クロムハーツを身に付けヨガを語る鶴太郎そっくりの森雅之。帰国子女界隈やレイバー界隈としての加東大介岡田茉莉子の作り笑いの幸せをアピールするカップル、シャイなのに憧れの女をレイプするサイケ教団教祖の山形勲など、ある意味ママと娼婦や地に堕ちた愛より更にラディカルなキャラクターが跋扈するサイケ界隈ムービーであった。

 

今尚、ドラッグや女性遍歴や国内外レイブなどsnsでの不良や遊び人、学歴職歴マウント合戦があとをたたない世相下で近年ますます再評価が高まりつつあるクロムハーツのヨガマスター〜片岡鶴太郎〜という海賊版セレブ芸人のパイオニアについて熟考する一日であった

 

そう言えば、冒頭ダニエルシュミットのヘカテにも似ているな。と思いながら、見始めたらずっと忘れていて3日経った今思い出した。

 

追記

15年前に観た時は森雅之は優柔不断でひでーやつだな。と思ったが、今回観てみると、関わった女全員に常に誠意は見せようとしていて、小心者でナルシストで役人的な面もありつつかなり責任感の強い男なのかな?と見方が変わりつつ、最後しんみりしたりもしつつよく考えるとこの男が全て悪いわけではないにしろ関わった女が全員不幸に死んでいってる死神みてえな奴だと思った。が、高峰秀子の時間軸と目線で映画は語られてる為に映画を観ている時は最後のとこで物語が完結してしんみりする。

あと今回、岡田茉莉子の目つき悪いなー。と思いながらみていると途中に新聞記事で元旦那に無理心中で殺された事がわかるけど、その記事にあまりにもしっくりくるロボットっぽい不吉な未来を暗示している顔というか。

 

徒然なるままに色々と思い巡らせてみると、この映画は老いへの恐怖や甘美なノスタルジーという抽象的概念をふわっと映像化したもののように思える。その為にヒッピー転落ムービーっぽくなってるのか?と気付いた

 

そう言えば、森雅之高峰秀子が高架下を散歩してる上をxの形に列車が交差するシーンは、アンドレテシネのレールの女を思いだした。つまり、レールの女は「一方に社会がありもう一方に差別と老い(=性)があり、浮雲は「一方に山形勲の宗教団体がありもう一方に差別と老い(=性)があった。列車と政治闘争は山本薩夫の日本泥棒日記における下山事件をxはビギーのfuck you tonightの「some say the X make the sexというフレーズを思いだす

 

この構図は先日観た是枝監督の怪物におけるシングルマザーと教育委員会が、三島由紀夫の自殺と金閣寺におけるマンション放火がアメリカンニューシネマの始まりとするならばホラー作家の巨匠キングの回想録であるスタンドバイミーとミザリーがニューシネマの終焉とする2点の距離感と日米安保の歴史の比喩だったりもするのだが、

作家とノンフィクションとフィクションの狭間にみせる政治的狂気ーシャイニングーそのイメージをクロードミレールの勾留におけるニノヴァンチェラとタイプライターの音。ニノヴァンチェラからメルビルの影の軍隊シモーヌシニョレ。シニョレからベッケルの肉体の門。メルビルからドロンの仁義。ドロンから太陽は知っている。のロミーシュナイダー。ロミーシュナイダーからポランスキーのチャイナタウンのフェイダナウェイ。チャイナタウンの湖から吉田喜重の水に書かれた物語の山形勲山形勲から宗教団体の教祖の浮雲へとリバースし波は果てしなく連鎖していく