色々と一流スター勢揃いと綺麗な映像の華やかなミュージカル映画であるが、2つの点に的を絞り話す。
一つはちばてつやのキャプテンみたいな世界観と江戸川乱歩の不気味な色使いが奇跡的に融合している事で、ほのぼのした話にほっこりするのと同時に毒毒しい色味も楽しめる。
2つ目は有島一郎がおぎやはぎの矢作にそっくりの動きをしている事で、小木の美学が佐田啓二のこの役の劣化版コピーであった事に気付くのだが、この映画をアメリカでパクるとカサバテスの「チャイニーズブッキーニを殺した男」になるわけで、そうすると小木をカサバテスの海賊版としてハーモニコリンのミスターロンリーみたいな感じでTVで鑑賞すると小木矢作というコンビの江戸川乱歩っぽい一面の愉しみを教えてくれる作品でもある。ちなみに有島一郎も三木のり平も森繁久彌映画とセットで出演する事が多く当初キャラの見分けがつかなくなっていたが、三木のり平はmicrophonepagerのsuikenとみうらじゅんのハーフ。みたいな感じで記憶すると......はいっ!記憶の中のsuikenが矢作に早替わり!って全然似てねーじゃん!というマリックのマジックを披露したサイキック染之助染太郎したーっ!
いずれにしても、この映画の佐田啓二が映画内で一回もギャグめいたところが微塵もなく終始2枚目キャラでありながら全てがコメディアンの哀愁と優しさに包まれている。という非常に難しい役どころに成功している。おそらく俺がおスギならイタリア映画みたいな叫び声を上げていた事だろう。
鰐渕晴子が片足の不自由な安藤忠雄を彷彿とさせる宇佐美淳にひたすら虐めぬかれるストーリーもそれを影で見守る杉山俊夫似のバレエダンススタジオのオーナー。「人一倍愛情があるから虐めるんや!」的なほのぼのとしたエンディングに向かう演出が倍賞千恵子との相乗効果で凄い。